去る15日、9日間の「中医学治療の研修」(中国北京)から戻りました。この時期の北京市内は、御存知の通り、空気の汚染(PM2.5の影響)が非常事態となっている状況の場所です。日々、中国政府から警報が発令されており、実際に辺りが真っ白になり、先が見えなくなることもありました。中国内の天気予報は、その汚染レベルを色で表示(黄色、一番ひどいときには赤色)されますが、私たちが行っている間は毎日、赤色の「ひどい」を示す表示でした。日本の報道でも取り上げているほどですから、旅行客はわざわざ、こんなときに北京へ訪れることはないでしょう。しかし、私たちは研修ですから、そうは言ってられません。PM2.5の対策として、皆さんはマスクなど準備しました。皆さんの大半は、外でマスクをしていましたが、そんなにひどいという感覚は余り感じませんでした。(中には最初から最後まで、マスクをしなかった人もいました。)
 今回、天気予報ではPM2.5の濃度が高く、ひどかったにも関わらず、私たちの間で呼吸器系に支障(咳やのどの痛み等)が出たものはなく、また体調を崩した人はいませんでした。目には見えないPM2.5ですが、日々、政府から警報も発令されていましたので、人体に悪いのは当然でしたが、私たちは大丈夫でした。

人間の体は、様々な環境に対して、乗り越える力を持っています。そして「気」の力を持って、身を守ることが出来るのです。

また約6年前の東日本大震災の話になりますが、福島県の原発が津波によって破壊され、放射能が広範囲に広がりました。当時、日本の報道では大問題として取り上げていました。しかし海外のメディアは、もっと重大な問題として取り上げました。中国の報道でも、大変なことが起きたと報じていました。ですから、日本にいた外国人は、(ほとんど自分の国に、)一斉に帰ってしまいました。中国人(特に留学生)もみんな帰ってしまう騒ぎになりました。この時、日本から中国の航空券の値段は何倍、何十倍にもはね上がり、手に入らないほどでした。(逆に中国から日本への航空券が、安くなったというのは言うまでもありません。)

私の父親も電話をかけてきまして、「あなたも帰ってきなさい」と言ってきました。また「この原発の事故による放射能の汚染は非常に危ない。広島や長崎の原爆の何十倍だから!」と言いました。まるで大きな原爆が落ちたかのような騒ぎです。もちろん福島の除染作業をしています方々は被爆しないように、心がけなければなりませんが、(御存知の通り、)東京の辺りはそんなに違和感を感じるほどではなかったと思います。
 

また(別の話になりますが、)2001911日、アメリカで起きました同時多発的テロ(ニューヨーク、貿易センタービル爆破テロ)は記憶に残っていると思いますが、この一ヶ月後に会議のため、はじめてアメリカへ行きました。この時は、ちょうどアメリカ同時多発テロ事件の後でしたから、いつ死んでもおかしくない状況の中、会議に臨んだことを覚えています。「全米審美歯科医学学会」から招待され、(グループには日本の歯科会会長や副会長などと一緒に)日本代表としてアメリカ(ニューヨーク)に行きました。

この時のテロに関する日本のマスコミの対応も、とても過剰なものでした。テロの厳重な警戒がされる中で、何があるかわからないという不安がありましたが、同時多発テロの7日後に「アメリカ炭疽菌事件」が発生しました。テレビ局や出版社、そして上院議員に炭疽菌が送付されて、死者が出ました。どこにこんな恐ろしいことが、またどこであるか分からないとマスコミは不安を煽りました。

日本からも当初、100人以上の歯科学会のメンバーが参加を予定していましたが、一気にキャンセルが出て、会長や副会長、理事長クラスの人だけが参加するような事態になりました。そんな中、私は会議に出席したのです。非常事態のような雰囲気でありましたが、日本の旅行会社に事情を聞いてみたところ、アメリカ国内で、やはり炭疽菌の話題が大きく報道されていますが、実際、騒ぎ過ぎだと言っていました。私も貿易センタービルの前に行きましたが、警官は毒マスクをしていたのがとても印象的でした。

 

人生には、必ず良いことと悪いことがあります。そして厳しい環境に出くわすこともあります。そんな中、様々な出来事に直面した時、どのように判断し、対応(行動)していくかによって、一人ひとりの運命は変わってしまいます。もし、(先に述べた)同時多発テロの過剰な報道があって騒がれた中、私がアメリカに行くことを躊躇し、やめてしまっていたら、講演も演武もできず、伝えたいメッセージが伝えられないままになっていたことでしょう。またチャンスをつかめたのにも係わらず、機会を棒にふってしまったことでしょう。

さらに、もし東日本大震災の時、私が報道で不安を煽っているのを鵜呑みにして、中国に帰ってしまっていたら、日本において嵩山少林寺秘伝の「少林寺気功」の指導は、不可能になっていたことでしょう。そんな時、帰るべきか?留まるべきか?と言った判断の中、答えは本能で出した決断に従い、その後も頑張って継続してまいりました。元々、自分から「少林寺気功」を広めていこうと決めたことですから、信念を曲げてしまうことなど考えませんでした。また周りからの影響に左右されませんでした。結果として、放射能や炭疽菌、今回のPM2.5についても問題ありませんでした。
 ですから、皆さんも自分の能力を信じて行動して下さい。マスコミなどの報道は過剰であり、過大に表現されています。(決してマスコミなどが悪いという訳ではありません。彼らも仕事です。自分が伝えたいことを目立つように書いて、注目を浴びるようにさせているだけなのです。ただそれだけです。注目もなく、載せることができなければ、仕事が無くなるのですから・・・。)

過去の話で、もっと酷かったのは中国国内で「SARS(サーズ)」が流行した時のことです。当時、その時期に当協会の指導員コース第8期生の認定旅行が予定されていました。この旅行は、北京経由でした。一行の中にはマスクをしていた人もいれば、しない人もいました。こんな時、まずは自分を信じて行動することが大事なのです。

 今回の「今日の言葉」は、新年最初の言葉になりますが、めでたい話と言うより、少し「活」を入れるような内容になってしまいました。しかしこれからの人生に対して、大いに役に立つことなのであります。子供が予防接種を受けて免疫力をつけていくように、今回のいくつかの話を聞いて頂いて、ご自身が実際に同じ体験をしていなくても、以上の経験を活かすことが出来れば、今後人生の中で、同じような問題や出来事、さらに環境の変化などに対して、過ちを犯さず、平然としていることができ、そして困難を乗り越えることができるでしょう。

 

今回の「中医学治療の研修」に参加した皆さんの報告を協会ブログやフェイスブックなどで掲載していますので、どうぞご覧になってください。楽しく過ごしてきた写真もあります。