「調和の心」は、現代社会の中で他人とのコミュニケーションや活動をする、また一緒に何かをまとめたり、共同で仕事をしていくといった上で、重要性が高く、必要な心であります。 一つの目標に向かって、仲間と一緒に進んでいくためには、協力し合うことがとても大事なことであります。
 日本人は世界の中でも、特に「集団の力」が強い人種と言われます。そのため仲間意識は高く、調和の心が非常に強いのです。しかし、最近では欧米などの影響により、調和の大切さを理解することが減り、調和の心を持つ人が少なくなり、調和の風潮が薄れて弱くなってきているのではないかと感じます。
 この調和の心とは、自己の主張よりも、周りの人たちに尊重して合わせる、また環境などに配慮して合わせていく心であり、とても重要なことであります。もし、自己中心的であったり、自分の意見だけ通そうとしたり、また周りの意見を全く無視してしまうようであれば、協調性は欠け、一緒に物事を築き上げていくことは、なかなかできないでしょう。

 それではどのようにして強調性があり、調和な心を養成していくことが可能でしょうか?
私たちの少林寺気功の訓練の時、一つ重要な理念として「天人合一」という言葉があります。天(宇宙)と人(私)が一つになることでありますが、自分自身が、もし、宇宙と一体(一緒)になったら、天(宇宙)と同じ力(パワー)を持つことができ、また「永遠の存在」を手に入れることができるようになります。宇宙の法則で、似たような物質の構造であれば溶け合います。たとえば水と油では、その構造を比べると大きさが異なるため、油は水の中に溶けない状態となります。そのため一緒にしても分離し、油は水の上に浮いているようになります。しかし、これが砂糖や塩であれば、水と(似た)近い構造になっているため、水の中に入れれば、よく溶けていきます。
 人間同士も同様に、合うとか合わないがありますが、よく意識して自分を変えて調和を図るべきです。もし自分と天(宇宙)と一緒になることを意識する、また認識した上で練習に励めば、自分の構造が変化していき、宇宙の構造と近いものになります。
 それでは、この「構造」とはいったいなんでしょうか?
たとえば、自分と天(宇宙)と一緒になるということは、「気の波動」です。あるいは「気の周波数」や「気の質」とも言います。その時、実践者がいかに宇宙の「気」を感じ取り、キャッチできるか、また一緒になるように合わせられるかに掛かっているのです。私たちは少林寺気功の練習の際、自分が天(宇宙)の気と合わせることをしっかりイメージして行わなければなければなりません。さらに周りの環境に合わせるということもしていくべきです。
この方法としては、イメージをして行う瞑想(静功)、そして呼吸を意識して行う気功(動功)を実践していくことです。
 そうしますと、どんどん自分の頭脳は自然の力がつき、調和の大切さが身に付きます。そして自分の個性もどんどん消えていきます。さらに周りの環境と一緒になっていきます。このように自分が自然と変わっていけば、相手とうまくいくことができ、周りとの調和を図ることができるようになるのです。
 
 特に少林寺気功の静功の中にある『大師大悲相応心法』の一つ「禅定通」がありますが、この練習をする際、「禅を定める」、あるいは「入静」の状態にしていきます。(自分自身が)禅の言葉をイメージしていっても、一切出てこなかったような場合、どのように訓練をすればいいのでしょうか?
「禅定通」では、自分は山になる、自分は川になる、自分は森になる、自分は石になる・・と何でもいいのですが、自分が自分以外のものに変わることをイメージしていきます。そうすると「禅の状態」に近くなることができます。
 普通に考えて、なぜこの方法が禅に近づくということになるかと言いますと、(逆に質問をするようになりますが)自分というものが「禅の状態」になるために、一番の邪魔になるものとはなんでしょうか??
 それは自分自身の「心」なのであります。自分自身があまりに大きすぎると周りと一緒になれず、合わないことになります。ですから自己中心的ではいけないのです。解決方法として、理屈で自分がどうしたら良いかと、答えを出そうとしても出てこないのです。違和感がなく、自分と周りが一緒になる方法は、上記の『大師大悲相応心法』の「禅定通」であり、これを実践すれば、簡単に周りと合わせることができ、調和を図ることが可能なのです。