最近は寒暖の差が激しく、急に寒くなったり、暖かくなったりと交互に続いています。しかしそのような天気でも、私たち人間の身体は耐えられるようにできています。ただ、波のように気温の変化が異常に起こると、体は順応しきれず、体調を崩してしまいます。
 つい先日、まだ11月だと言うのに、都内でも雪が降りました。なんと54年ぶりとのことです。少し積もったところもあり、真冬並みに寒くなりました。
皆さんも大変だったと思います。
人間の身体は環境の変化に対し、順応していくようにできており、また環境の中で「免疫力」と「抵抗力」は適応できるように成長しやすいものです。

私は今でも薄着(1~2枚)で過ごしており、朝、1枚程度でも全然平気でいます。今年は少し意識して自宅の部屋には、冷暖房器具を一切置いていません。こたつもありません。布団はつい先日まで夏掛けでした。これはとても薄い(太陽にかざしてみれば、光りが透けて見えてしまっているほどの薄さ)ものでした。
私たちの体は、非常に環境に左右されますが、慣れてしまえばなんともなくなり、慣れなければ体を壊してしまいます。このことは「陰陽」の観点から説明できます。“陰”の状態でなくなったら“陽”になり、“陽”でなくなれば“陰”になる、という変化していきます。たとえば寒い時は、寒く辛いと感じますが、一方でそういう時だからこそ、寒さに強くなるという能力が生まれるのです。
私の息子の平ちゃんも産まれた時は弱く、体も細くて成長が早いほうではありませんでした。この1年半ほど前からプールに通い始めました。冬もきちんと通います。ですから、この1年間風邪を引かない丈夫な体になりました。同じ保育園児が風邪で休んでいる中、休まず元気なので、保育園の先生方も驚いています。夜、平ちゃんの様子を見ると布団を掛けず、寝ています。掛けて上げても、すぐにどかしてしまいます。ある時には、一晩中、掛けていない場合もあります。朝、少し咳をしても、その後は全く平気なようです。
 逆に、私は日本に来て7~8年経ってから少林寺に戻った時、少林寺の後輩達と比べて(私や先輩達は、)以前より、弱くなりました。私の場合、日本に来て、特に冷暖房器具が欲しくなくても、公共施設の場所など、大半の場所でエアコンが効いていますから、自然と身体の調節機能が弱くなったのです。私は日本に来てから15年位は、自宅には冷暖房器具は付いてもなく、ありませんでした。ある年の夏、猛暑が続き、一番安い(3万円位)工事費込みのエアコンを初めて着けました。
 人間の身体と自己が生存する環境に、よく慣れていくために、始めは少し我慢して、環境に合わせる努力も必要です。このような能力は体を甘やかせていては向上も強化もされません。私はとても重要な能力だと思っています。もちろん最初は辛いかも知れません。しかし体が慣れたら、逆に楽になり、実は気持ちいいのです。
 お話したように、息子の平ちゃんに温かい布団を掛けて上げても、すぐに払ってしまいます。温かいと落ち着かず、冷えているほうがよく寝ています。このようなことは、私たちの練習、そして鍛えることと同じなのです。陰陽の話でたとえると、天気が良くなったり悪くなったり、また気温の変化で暑くなったり寒くなったり、(今年の夏が異常に暑かったら、その冬もとても寒くなるように)全てのことは反対のことが起きます。あの東日本大震災の2カ月前に異常な暖かい日(1月)がありまして、マスコミも皆、「非常に暖かいですね」、「気持ちいいですね」と言っていました。その時、私は非常に「まずいな」と感じていましたが、案の定、2カ月後に大震災が起きました。私たちが学んでいる陰陽の智慧を、単に知識で終わらせてはいけません。これは4000年の人類の叡智なのです。授業で教えています「陰陽五行理論」や「気」について、理解して終わりではなく、「人生の智慧」であり、「禅」に通ずることであると認識すべきです。

日本は、経済がここ10数年も下り坂で低迷しています。このような状況でも、諦めずに落ち込んだりせずに長い目で見ていくように致しましょう。(歴史的に)どこの国でも同じであります。成長して発展したり、衰退して滅びたりしていますね。中国も少し前、経済成長をしてものすごい発展をしましたが、近代の200~300年は、世界(欧米や日本はどんどん発展していく中)と比べて、大変遅れてしまっていた状態だったでしょう。中国も昔、「唐」の時代に遡れば、その時には世界でもトップクラスの発展を見せました。またイタリアも同じですね。昔、ローマ帝国を築いていた時は世界一の『大きな力を持つ国』でしたが、今はそうでないでしょう。こういうことは、波のように良い時と悪い時が繰り返されるのです。
ですから、私たちが学んでいる「陰陽五行理論」、そして「禅」のことは、決して知識のみではなく、また説明できるということだけではいけません。練習の中で感じ取り、ものにすることができましたら、皆さんはもう4000年の歴史における勝者、あるいは知者になることでしょう。私たちの普段の教室において、練習していることは「健康増進」、「脳力開発」といったことに結びつきますが、それぞれの人生については、歴史上からの人物から学び、自分にとって一番良いと思う生き方をしていけることが、本当の幸せではないでしょうか?