今年はコロナ禍にあり、誰もが健康に対して意識をしていますが、多くの方の不安と悩みは「どうしたら免疫力を高めることができるか」ということであります。今日、世界中では様々な情報が飛び交い、方法も多様にあるように思いますが、実際には何をどうしたら自分にとって良いものなのか、迷ってしまっています。こうした中、少林寺気功は長い歴史があります。“武”の肉体と“禅”の精神(心)の両方を支えるのが“気”であり、まさしくそれは少林寺気功です。このことは世界中の気功の中でも大変注目されることであります。しかし世の中には多くの気功師がおりますが、不信感を与えるような話も聞きます。あまり良いイメージがなく、その素晴らしさを歪めてしまうほどです。中には信じないとか、理解できないという人もいますが、非難してはいけません。私たちのように、気功師自身の努力が必要であり、よく考えて行動すべきことなのです。
さて、「医療」と「気功」はどういう関係だと思いますか。たとえば(日本の場合)鍼灸、指圧、推拿などの医療の基礎は中医学理論であります。または漢方の理論(特に古典理論)も、気の理論により、治療を支える役割があります。しかし施術を行っている気功師の中には、そうした理論を知らずに携わっている者も大勢います。
もし鍼灸、指圧、推拿などの中医学理論や伝統理論を理解するためには、黄帝内経を読まなければなりません。この本は中医学において、最高であり、とても重要なものとされています。それでは、この中にどれだけ“気”について書かれているかというと、総数15万文字位のうち、気という字が出てくるのは実に3千回以上であります。これはある文章の50文字のうち、一文字は気という字が出てくる計算になります。(日本語で書かれている本の中でも)一頁中、3~4カ所以上は気の文字が入っています。これほどまで多く、また頻度が高いということは、黄帝内経の中で気が一番重要なことであることがわかります。これは中国の大学で調べた結果でありますが、私の授業でも説明しています。さらに黄帝内経は東洋の哲学の本、また気功の本としても位置付けされています。この基礎となるのは中医学です。その多くは病気やその治療法として記載されています。ただしその指導、またはその方法は宇宙論であり、哲学なのです。主に陰陽五行の概念です。この“陰陽”という言葉も(気ほどではありませんが)何百回も出てきます。ですから気功とはこの本の中において、核心的であり、中心的なのです。病気の話であれば“病”の気ということであり、治療の話であれば、体の中の正気や陽気ということで出てきます。もし気という存在がなければ、黄帝内経の考え方が成り立ちません。
(黄帝内経については、また別の機会に詳しくお話したいと思いますが、)中国本土で一番重要な治療法が気功であります。他の方法は東西南北の環境や風土によって変わるものですが、その中心にあるものは“気功”の治療法です。中医学の理解を深めていただければ、皆さんの気功がもっと深まることでしょう。
さらに皆さんの理論や実技において、大変役に立つことでしょう。