全日本少林寺気功協会が指導する気功法『少林寺気功指導員養成コース』は、約千五百年もの歴史のある少林寺武僧による修業の賜物であり、少林寺の秘法であります。そしてその秘法を人間の健康、能力開発などのために編纂され、外部(少林寺以外)の人に伝授できるのは、世界で唯一、当協会にしかない、まさに特別なものであります。
実は、この少林寺気功指導員養成コースは、総本山である嵩山少林寺でも行っていないプログラムであります。ただ私が毎回、嵩山少林寺に戻る時に釋永信管長、そして禅医の釋延琳さん(崇山少林寺少林薬局局長)から依頼がありまして、少林寺のお坊さんや在家のお弟子さんに教えています。
このコースのプログラムは、系統的にしっかりしている内容となっておりますが、一般の方に教えているのは、ここ東京の本部のみであり、私しか指導しておりません。なお、コースの名称については、わりと現代的でありますが、現代の私たちが分かりやすいようにネーミングし、内容も実践しやすいように作りました。中身については、少林寺千五百年の歴史とお坊さんの修業し築き上げましたものであり、心と体の修業の真髄であり、一番奥深いものであります。それらのものを現代人に合わせて、この現代社会で活かすことができるように、自分の時間で自宅でも出来るようにと、まとめられたプログラムです。これは「換骨奪胎」のような強さと言えますが、少林寺全体のシステムからお話したほうが分かりやすいでしょう。
嵩山少林寺の気功や武術など修業の内容は、膨大な量になります。本来の修業目的は、お坊さんの精神的(心の)修業です。座禅を行ったり、お経を読んだり、仏教の教えに基づいて「悟り」を目指すために実践しているのです。
少林寺が建立した当初(今から1,400~1,500年前)の頃は、座禅の修業は一日に10時間を超えていました。しかし、これでは身体を動かさないので、お坊さんの健康は悪くなってしまいます。ですから、座禅の修業には体を動かすことが重要となりました。また少林寺は山奥にありますが、自分自身の命と少林寺の財産を守ることが必要でした。そのためには武術を習得しなければなりませんでした。このようにして少林寺武術が生まれ、発展してきたのです。
これまでも少林寺武術の効果については、何度も述べてまいりましたが、「心」と「体」が、一体として結びついていくためには、「少林寺気功」が必要となります。“気”というのは、人間の身体の中に流れているものです。少林寺の“禅”は、基本的に静かなものであり、智慧を授かることであります。また“武”は基本的肉体の高レベルの動きによるものです。この動きは激しく動くということが多いのです。
このように「静」と「動」を別々のものにするのではなく行うことが良いのですが、(仏教の観点から言いますと)一緒に行うということは難しいものです。
しかし陰陽五行の観点からすれば、静かな状態は「陰」であり、動きのある状態は「陽」です。これはまるで水と火の関係です。水と火が一つになると、どちらかが相手を消してしまうことになるでしょう。この場合は水が火を消してしまう・・・。しかし、少林寺気功では、水が火を消すという作用だけではなく、お互いを補充して、または促進させていきます。さらにお互いを強くさせるといった効果があります。これらの大元は“気”によるものです。気は全身に流れていますから、(静かな)心より、(動く)肉体に流れ伝えることができるのです。また動きの中に静かな要素(智慧など)が入っているのです。そのため、少林寺気功は、禅と武、また心と体同士がつながるための手段となるのです。
以上のことから、当協会が指導しています少林寺の気功法『少林寺気功指導員養成コース』は、私たちの身体の人体科学、あるいは人体理論により、非常に合理的でしっかりした土台の基で作り上げられているのです。
ところで、少林寺武術ができる人は、元々素質があり、実践には年齢も関係があるでしょう。少林寺武術はスピードが速く激しいですし、体の動きに求めるものは、非常に高いレベルなものです。実践者の年齢の多くは10代です。
当協会は、幼少期から高齢期まで幅広い年齢の方を対象として、皆さんができるような内容にしており、非常に役に立つもので、一人ひとりにとって重要なものになっております。決して10代だけの人たちだけができるようなものせず、私が内容の改良を加え、指導しています。
しかし、誰でも(高齢者、病気や障がいを持った弱者でも)実践が可能なものとしてあるのは、少林寺気功(「静功」と「動功」)であります。
現代では、「心」が社会に適応できずに病に罹る人が大勢います。心が弱く、中にはうつ病となってしまったり、神経症になってしまったり。しかし、こういった方たちでも、少林寺気功の練習ができるようになっているのです。少林寺気功は静かな動きですが、その練習の型は少林寺武術の基礎の動きと根本的に同じであり、実は強さも秘めています。ですから、少林寺気功の「動功」でも(少林寺武術同様に)習得することが可能なのです。
少林寺気功の『少林寺気功指導員養成コースⅠ』の「動功」には、三大動功というのがあります。気功の動きは世界的に見ても、どの流派でもすべて武術の動きからきています。しかし、少林寺武術の訓練を誰もが実践できるかというと、難しいものでしょう。少林寺の武術は(先にも述べましたとおり)膨大な量の内容であり、700種類以上の「型」があります。少林寺秘伝七十二芸、または檎拿術や格闘の技などがあります。主に心身を鍛えるための人たちにとっては、短期間で習得することも可能かもしれませんが、一般的に普通の人には無理ですから、そういう人たちのために三大動功があるのです。この三大動功を練習すれば、どんな人でも心身が強くなるようになります。この練習期間は二年間になりますが、強くなった身体は、どんどん“武”のような状態になるのです。
まずは、三大動功の一つ「鶴功三十六式」を、一年かけて行います。鶴のような・・・(後半に続きます)