今回は、先月28日から8月4日まで、嵩山少林寺で開催されました2017首届少林无遮大会(嵩山少林寺の世界大会)について、報告します。
まず、この无遮(むっしゅく)の“遮”という意味ですが、例えば条件や設定等がないということを差しており、どなたでも無条件で参加できることです。男女を問わず、子供でも老人でも、また外国人、僧侶、一般人であっても関係なく、誰でも平等に参加できる大会なのです。
今回の2017首届少林无遮大会は、前例のない大きなイベントとなり、盛大に行われ、無事に成功を納めました。なお、少林寺1500年の歴史において、初めての大規模な催しとなりました。また武林における最大級の大会と言われるほどでした。さらに数々のメディアからは、東洋のオリンピックとも言われました。なぜなら、今大会の内容が少林寺の“武”としては「少林寺秘伝七十二芸」のうちで、最もレベルが高いものだからです。
主な種目は、「鉄砂掌」(重ねたレンガを手で割る)、「二指禅」(人差し指と中指で逆立ち)、「掌上飛刀」(棒手裏剣のような小刀を的に投げる)、「石鎖競技」(75キロの石のおもりを片手で持ち上げる)の四種目が基本、その他鉄足を競うものなどがあり、それぞれ試合が行われました。
また(日本の弓道のような)槍投げの試合もありました。この種目には中国勢が力を入れており、中国各省から選ばれたプロの選手やオリンピック選手も含めた6つの団体チームも参加しました。日本の弓道も元々は中国「少林寺より、“禅の弓”」から渡って来たものです。
続いて、少林寺の“文”としては、まず「禅の弁論大会」が行われました。この大会は昔にもあったものですが、とても興味深く貴重な大会であり、とても好評を得ました。2日間に渡り開催され、交流も深まりました。
次に「囲碁の大会」がありました。この囲碁の部門は、先に全国から選ばれた優れ者が集まり、最後に囲碁八段のチャンピオンと試合をする内容でした。最後は、勝ち残った者がチャンピオンに勝ちました。
また中国南北朝時代の少林寺仏教をテーマ(ちょうどその時代は少林寺では達磨がいた頃であります)に、「仏教のシンポジウム」が世界20数ヵ国から集まり開かれました。日本からも4名の大学教授が参加して、論文の発表もあったようです。
さらに禅の絵画や書道の展覧会もありました。
以上のように、“文武”の両方で6つの部門の大会が同時に開催されましたから、規模が大きく、大会全体の調整も大変なものとなりました。
私たち協会が主に参加しましたのは、「少林寺秘伝七十二芸」の試合です。実はこの中の種目のうち、「二指禅」で参加できる協会の会員がおりましたが仕事の都合で行けませんでした。なかなか多くの会員が忙しく参加できない状況でありました。しかし釋管長の直々のご指名もあり、日本代表として2名(飯塚貴子さん他1名)を選び、大会に出場致しました。
今大会において、飯塚さんが出場しましたのは「鉄砂掌」の種目です。当然、鉄砂掌の訓練や練習はしておりません。もしこの練習をしたなら、両手は、変形して腫れてしまうほどのものです。中国国内でも、この鉄砂掌の訓練をしている人は手の厚さが通常の2~3倍にも膨れています。まるで熊の手のようになってしまうのです。ですから飯塚さんは「世界少林寺気功武術健康大会」において披露しました瓦10枚を寸剄(あまり手を動かさずに手のひらで瓦を割るというもの)を行うため、自由表演の部門に参加いたしました。
ご本人も今大会初日だけの滞在のため、決勝戦は翌日ということもあり、最後の試合まで出場することは出来ませんでした。あまりにも大会そのものが大規模なため、なかなか細かいところまで配慮されない部分がありましたが、飯塚さんはできるところまで冷静に平常心を持って臨みました。飯塚さんは参加が決まってから、大会当日まで時間を調整し、一生懸命練習に励みました。直前までに2回断食も行いました。1回目は3日間の完全な断食を行い、2回目は出発から試合までの間の2日間の半断食を実践しました。そのため、試合ではとても良いコンディション、且つ集中して挑むことができたのです。その結果、素晴らしい成績を収めることができました。今回、飯塚さんの出場が中国(日本のフジテレビ局も取材がありました)のマスコミに話題となりました。日本から女性が来て、少林寺秘伝七十二芸に出場(女性でも唯一、飯塚さんのみこの種目に参加)ということが、大変興味を持たれたのです。注目を浴びた飯塚さんに、マスメディアの方々がたくさん集まり、本人の試合に間に合わないほど、取材の対応に追われました。飯塚さんは、完全にスターのような扱いになりました。これには本人もビックリするほどでした。しかしこのことに動揺することなく、平常心を持って、練習通りに行い、とても良い結果を出しました。
後に嵩山少林寺より、少林寺秘伝七十二芸演武の最優秀賞を頂きました。頑張った成果でありますから、とても良かったと思います。
また当協会は、「優秀団体賞」を頂きました。この意味は、少林寺のことを世間一般に幅広く広める活動している組織に対しての賞でありますが、大変光栄に感じております。
私たちひとり一人も努力し、一生懸命練習すれば、良い結果を出すことができるものの証明となりました。良い成績を出せれば、社会からも、地域(私たちの場合、東京都)からも良い評価となります。全体的にも素晴らしいことであります。
今回、私は大会の閉幕式まで参加しました。少林寺秘伝七十二芸の2日目の試合や槍投げ、また石鎖競技などの一通りの試合を観ました。大会3日目には、仏教研究シンポジウムの討論会に参加しました。残りの2日間は、弁論大会を傍聴しまして、いくつかの質問もいたしました。今大会は様々な部門の試合などがありましたが、非常に良い結果を遺すことができました。
今回、当協会としては、急きょ決まって参加することになりました。また大規模な大会で少林寺の僧侶も大変ご苦労されて運営していた印象がありました。しかし終わってみれば、とても素晴らしい大会になりました。