【第五章 気功の呼吸系統への効果】
第五節 気功による呼吸調整が乱れた場合の生理メカニズム(3)
(三)呼吸に対する過度の注意が引き起こす焦りについて
 気功練習者の中には、早く高いレベルに到達しようとして、「呼吸の深さ、長さ、細さ、緩め?」をことさらに追求する者がいるが、そうした場合、呼吸回数を減らして、激しく息を吸い込み、必要以上に長く息を吐き出そうとする。そして、力をこめて息を吐き尽くした後、強制的に息を止める。この結果、「精神の緊張、息がつまる、胸が苦しくなる、息があがる、呼吸困難、息の長さの不揃い、短い呼吸」といった症状が出てくる。また息をいったん止めて、何回か息を吐き出せば、リラックスした状態にもどることができる。しかし、筋肉は緊張状態に陥り、大脳も入静(にゅうせい=精神統一状態)に入りにくくなり、精神的に焦っている状態に陥る。
 気功によって呼吸を調整する時、「意図の妙は微にあり」や「忘れず助けず」、「有るに似、無きに似る」といった昔からのことわざに従うべきであり、集中しすぎて緊張状態に陥ってはいけない。
 要するに、気功訓練中に呼吸がおかしくなる原因は、主に呼吸の調節方法が自分自身の新陳代謝の需要に合わないためであり、こうした意図的な呼吸調節系統の活動と、非意図的な呼吸調節系統は矛盾して衝突してしまうのである。それゆえ、息を調節する時は、自然で心地よくあるべきという原則に従わなければならない。主として、自然に従い、必要なときは少々意識して導くようにしていけば、好ましくない反応は起きにくくなる。こうしてはじめて、安全にかつ有効に呼吸調整する、という目的を達成できるのである。