第四節 気功の呼吸調整中における大脳皮質の状態(3)
低位呼吸中枢の興奮活動も、大脳皮質に拡散する可能性がある。1940年代に、旧ソ連の学者は、呼吸中枢の興奮が大脳皮質の活動に影響を与えることを発見した。息を吸い始めてから、どんどん息を吸いこむにつれて、ある皮質領域の興奮レベルは上昇していく。逆に息を吐き出す時は興奮が収まっていき、そして呼吸の間隔が伸び、大脳皮質は興奮が収まってくる。このほか、脳波の変化中には、呼吸のリズムと法則が存在しているのだが、これは呼吸中枢が大脳皮質に一種の影響を与えていることを示すものだと言えよう。
気功によって息を調整する時、息を吸い込むことに注意して、深く息を吸いこむと、大脳皮質の興奮、あるいは覚醒レベルが高まる。反対に緩やかに深く息を吐き出すと、大脳皮質の興奮状態が解除され、大脳皮質の興奮と抑制過程のバランスがとられる。
また、正常な条件下では、条件反射性の影響も呼吸運動の調節に、終始関与している。言い換えれば、大脳皮質の呼吸運動に関する調節作用は、条件反射によって起こっているとも言える。例えば、ある部屋で人が高濃度の二酸化炭素の影響を何度も受けた場合、呼吸を強化してから、もう一度この部屋に入るとする。すると、二酸化炭素の濃度が高まらなくても、被験者の呼吸は著しく深くすることができるのである。また、二酸化炭素を吸い込んだ時、大脳皮質の運動領域の興奮性は変えられ、呼吸発生の変化がいち早く現れるということが、動物実験によって証明されている。
気功による呼吸調整方法には、様々な種類があるが、多くのものは呼吸運動と身体活動や声・環境などの要素と関係があり、呼吸性の条件反射を形成している。このため、気功による呼吸調整の過程において、呼吸性の条件反射の形式や強固・減退・一般化・分化などは、当然重要なポイントであると言える。
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