一、気功状態の呼吸数及び形式の変化(2)
 日本人の学者「島岡 緑」らが気功の修行者の呼吸を測定した結果、以下のようなことがわかった。それはすなわち、十年間「瑜伽功」の修行を積んだ者の場合、落ち着いているときの呼吸数は1分につき5~6回であるが、気功を行っている時の呼吸数は1分につき1.5~2回となり、さらに減少するということである。
このような呼吸数はきわめて少なく、無呼吸に近い状態であり、人間の生理極限を越えているため、人々に驚きをあたえる。1回あたり数百ccの呼吸によって、1分間あるいはそれ以上長い時間におよび新陳代謝の需要を、維持できるというのは、想像しがたいことだ。
 以上に述べてきた事柄を総括すると、気功を行っているときにあらわれる一番明らかな生理変化は呼吸の減少で、一般的には一分間につき3~4回ほど少なくなる。数十分、ないし数時間の気功の練習において、気功者はこのように極めて少ない呼吸を保っているが、不快感や酸素不足といった症状をまったく示しておらず、この状態が身体の低代謝レベルと関係があることは明らかである。また、呼吸中枢の機能活動が比較的低いレベルになっており、大脳と関係がある大脳皮質域が抑制状態にあることが反映されていると思われる。
 
二. 気功中における隔膜筋運動の変化
  横隔膜は主な呼吸筋のうちひとつである。静かに息を吸うとき、外肋間筋およびその軟骨間筋の収縮により生じる胸郭が挙上と横隔膜の沈下により、胸腔容積が拡大し空気が肺に流入していく。
内肋間筋の収縮による胸郭の沈下および腹壁筋の収縮による横隔膜挙上により空気が肺から吐き出される。横隔膜の挙上と沈下は、腹壁筋の収縮・弛緩運動に伴っておき、このような横隔膜の運動による呼吸を腹式呼吸と言う。気功の鍛錬には腹式呼吸を採用することが多いが、これが横隔膜の運動を高めることは明らかである。
 レントゲンによって測定した場合、気功者が練習するときに起こる、横隔膜の変動の幅は、気功をしない人のものより大きい。
気功を行うとき、腹式呼吸の横隔膜の運動幅は、静かに呼吸している時より2~3倍深いが、胸腔と腹腔の内圧が明らかに変化するため、内臓形態や機能も相応の影響を受ける。
横隔膜運動の増強によって、一定のリズムとルールのもとに腹腔の内圧と変化の程度が変わるため、胃腸および内臓に良好なマッサージ作用が生じ、胃腸の蠕動(ぜんどう)機能と腹腔器官の血液循環を促進し、内臓の機能が強化される。