7月30日、中国嵩山少林寺の世界大会「2017首届少林无遮大会」の七十二芸武術大会に参加してきました。
実際に大会が終了してから理解したのですが、武術大会だけではなく、禅、囲碁、弓道など各部門で7/28~8/4の8日間にわたり世界大会を行うという少林寺の総力をあげての大々的な大会だったようでびっくりしました。
少林寺の境内では写真展が開催されていたり、山門や周辺も赤や黄色の幕で装飾され、少林寺全体が大会祝賀で湧き上がっているようでした。
少林寺近くの数々のホテルは各地から招集された各部門のエキスパート達の宿泊の為に貸切られ、中にはマスコミ専用の貸切ホテルもあったと聞きました。中国のメディアは数が多く今回の大会で取材にきたメディアは250社以上とのこと。なにもかもスケールが大きく驚くことばかりでした。
七十二芸武術大会は7/30に予選、31日に決勝が行われるとのことでしたが、私は仕事の休みが取れず、29日に東京を発ち、30日の予選に参加、31日には東京に戻るというスケージュールでした。
少林寺には七十二の武芸があるそうですが、その中でも競技になりそうな「鉄砂掌」(重ねたレンガを手で割る)、「二指禅」(人差し指と中指で逆立ち)、「掌上飛刀」(棒手裏剣のような小刀を的に投げる)、「石鎖競技」(75キロの石のおもりを片手で持ち上げる)の四つと自由表演の5部門が行われました。
私は「鉄砂掌」という部門にエントリーされていましたが、中国のレンガを触ったこともなく、手で割ることができるかどうか検討もつかなかったので、日本から瓦を持って行き、瓦10枚を寸剄(あまり手を動かさずに手のひらで瓦を割るというもの)で割る事にし、自由表演の部門に参加させていただきました。(この瓦が重すぎて飛行機の荷物重量制限をオーバーしてしまい、日本から持って行くのがすこぶる大変でした(笑))
もし時間があったらバットも手で折る「バット手刀」も行うということで一応バットも用意していきました。

30日、北京経由で鄭州空港に到着。かなりの雨でした。雨!ということで正直かなり慌てました。
といいますのも、瓦やバットなど折ったり割ったりするものが濡れる=同じ物かと疑うほどかなり折れにくくなる、割れにくくなる、からです。
瓦の方は幸い割れないようにかなり梱包したのでなんとか大丈夫だろうと思いましたが、バットの方は案の定みるからにビショビショでした。
夜中ようやく鄭州のホテルに到着し、すぐに就寝。
31日は朝早くホテルを出発していよいよ少林寺へと向かいました。
会場は少林寺の山門前を通り過ぎて少し行った 外!の演武場でした。
雨のためぬかるんでしまい靴も靴下もビショビショでドロドロ。会場の奥に舞台が設置されていましたがもちろん屋根は無し。
瓦やブロックなど運ぶ為に傘もささなかったので雨に濡れてかなり寒い状態の中で、出番はいつかなぁ?いつブロックの梱包を解こうかな?と待っていました。
その間、中国のマスコミの取材が殺到し、秦先生に通訳していただきながら色々な質問に答えどうしでした。
どうやら七十二芸武術大会に参加した選手116人中、女性は私一人だけ、しかも日本人だったということもあり注目を集めたようです。
1番多かった質問は「女性なのに何で武術をしているのか?」でした。
現代の中国では「武術」は警察や軍への就職、体育大学への進学、武術ショーへの出演など、将来の進路を優位にする為に行う人が多いらしく、私のような48歳のおばさんが今更就職先をみつけるわけでもないのに何故武術をするのか不思議なようでした。
中には「女性なのに武術をして凶暴になったり男性化しないですか?」などの楽しい質問もありました^^。
辛かったのは座禅です。
座禅をしている映像を撮りたいようでしたが、あいにくの雨でどこもかしこもびしょびしょ。
おしりがやっと乗るくらいの小さな石の上にビニールを敷いて座禅することになりましたが、組んでいる足をのせるところが無い!
カメラは回っているし、これは耐えなくてはいけないと思い腹筋に力を入れまくり、組んだ足を持ち上げ続けました。
瞑想とはほど遠く、必死に腹筋の筋トレをする「座禅?」の映像となりました^^;

日本のフジテレビの取材も受けましたが、後日放映された「みんなのニュース」では「全日本少林寺気功協会」や「少林寺気功」のことは全くふれられず、日頃のご恩返しに少しでも協会の宣伝になればと思い受けた取材でしたので少々残念に思いました。

肝心の瓦割りですが、結局午前中は行われず、午後からとのこと。
雨は上がりましたが、こんどは照りつけるような暑さとなりました。
午後は自由表演から。
始まる直前に演武順が記載されている紙を見させてもらって大慌てしました。
一番手に日本からもう一人参加したYさんの名前が記載され、私は一番最後に記載されていました。
この順番が大慌ての原因です。
瓦だけで既に重量オーバーの為、持って行った建築用ブロックは2個。
Yさんは台の上に置いた建築用ブロック2個を足で蹴って割るという「鉄足」を行う予定です。
でも、Yさんが割ろうとしているブロックは、私が瓦割りの時に瓦を乗せる台がわりに使用する予定です。
つまりYさんが先にブロックを蹴って破壊してしまうと、瓦を乗せる台が無くなってしまうというわけです。
演武の順番は私が先でなくては困るわけです。
私の寸剄の技がもっと優れていれば、どんな高さであろうと瓦を割ることが出来るのでしょうが、まだまだ高さの許容範囲が狭く、台の高さが変わってしまうと割ることができるかどうかわからない状態です。
秦先生に通訳して頂いて、なんとか順番を変えてもらうことが出来てホッとしました。

ホッとしたのもつかの間、私が一番手に。
慌ててブロックの台を置き、瓦を乗せて準備しました。
舞台上は選手と審判員しかあがれないようで、秦先生は舞台の端に待機していました。

審判員に何か言われるのですが中国語なので分からず、秦先生は遠くで通訳は無理。どうしようかと思いましたが、たぶん、審判員に礼をしろと言っているのだろうと判断し、後ろにいる審判団に礼をし、隣りにいる審判員に礼をし、正面に礼をして、やっと、いよいよ、瓦割り!
と、思ったらまた何か言われて、仕方ないのでもう一度隣りの審判員に慌てて礼をしました。
どうやら、「始め!」の合図だったようですが。

最初から最後まで慌てることが多く、落ち着いて集中もなにもできない状態でした。
以前の自分ならたぶん全く集中できないまま失敗に終わっていたと思います。
しかし、不思議でした。
この時は一回の深呼吸でスッと集中出来たのです。
今思えば舞台の端から秦先生が集中できるように何かしらの気をおくって下さったのかもしれません。
瓦10枚、何の抵抗もなく私の手のひらの下で一瞬に割れていきました。

そしてYさんがブロックを蹴り割り、私達の少林寺武術大会はこれで終わり・・・と思った瞬間、秦先生が「バット!」と叫び・・・
手刀でバット折りもやることになりました。

しかし、既に瓦を割ったことでホッとしてしまった私は今度は集中が出来ず、一回目失敗。
雨で湿っているからいつもより堅いことは覚悟の上でしたが、手に当たった感触は想像以上に堅く、二回目の失敗でこれ以上は手の骨の方が折れると思い、慌てて靴をぬいで足の回し蹴りで折りました。
こうして私の武術大会は幕を閉じました。

今回の武術大会に参加させていただき、まずはじめに感じたことは少林寺のすごさです。

少林寺といえば男性のみの修行僧、女性は近くに尼寺があるそうですが、そのような少林寺の武術大会に女性の私を参加させてくださるという奥の深さ、大きさに感動し、感謝しました。

次に感じたことは、人の思いというものは、思い続けて邁進していれば必ずかなう時がくるということです。
私は幼少の頃、リーリンチェン(ジェット・リー)主演の「少林寺」という映画を観て武術に興味を持ち、いつか少林寺にいってみたいと思っていました。
憧れだった少林寺に来て、しかも「すべての武術は少林寺に通ず」という武術の聖地の武術大会に実際に参加することができるなど、あの頃は想像も出来ませんでした。
思い続けて努力すれば、たいていのことはかなうのだろうと実感できた今回の少林寺行きでした。

そして最後に思ったのは、自分自身の成長と未熟さです。
雨の中や炎天下で長く待つことになっても、深呼吸を忘れずイライラしないで、むしろその場にいられることに感謝でき、その状況を楽しむことができたこと、一呼吸で集中しきれたこと、これは少林寺気功のおかげで成長できたところだと思えました。
しかし、一度集中しきった後に集中力が切れると、またすぐには集中できない未熟さも実感しました。
木が湿っていようとどんなに堅かろうと折るという意念を通しきることができなかった未熟さを実感しました。
常々、集中して気をためないと割れない、折れない。高さや環境など条件があわなければ折れない、割れない、では武術家として通用しないと思っていました。
いかなる状況、環境であろうと、一瞬で集中し、集中を解いてもまたすぐに集中し技を貫徹することができるような武術家、気功師になれるようにこれからも精進していくつもりです。
よい経験をさせていただき本当にありがとうございました。心より感謝します。


この坂を登ると会場です。


少林寺山門前の広場。


少林寺山門前。
大会の旗がいたるところに立ち並んでいました。


少林寺山門。装飾が綺麗でした。

大会の旗がいたるところに立ち並んでいました。

 

この小刀を離れたところから的に向かって投げる競技も行われていました。

 

大会プログラムです。

わざわざ(女)と記載してくれて、かなり目立ちました.

 

七十二芸武術大会参加団体の内訳が記載されているものだと思いますが、これもやはりわざわざ男女別の人数になっていて目立ちました.

 

大会参加賞のようです。

全てに大会の名前が入っており、館長執筆の本までいただきました。もちろん中国語なので、辞典ひきひき少しずつ読むつもりです。

(次の大会までに読み終わるか心配ですが。)

少林寺総力をあげての大会だったことをあらためて実感しました。

 

飯塚

 

 

 

大会の盛大さがつたわる素晴らしいレポートありがとうございました!!